線形代数

行列の簡約化

例題を解きながら行列の簡約化の手順をステップに分けてどこよりもわかりやすく解説します。行列の簡約化は線形代数のほとんどの問題で登場する操作であり、ポイントを知っておくことで簡単にできるようになります。

簡約な行列とは

「簡約な行列」とは、次の条件を満たす行列である。

簡約な行列
  • 行の主成分が1(0だけの行は除く)
  • 主成分が右下に向かって階段状に並んでいる
  • 主成分がある列の他の成分が0

簡約な行列の例

主成分とは、行の0でない最も左側の成分のことである。

行列を簡約化するには、以下に示す3つの基本変形を駆使すればよい。

行列の行基本変形
  • 1つの行を何倍かする。(0倍以外)
  • 2つの行を入れ替える
  • 1つの行に他の行の何倍かを加える。(0倍以外)

解き方

簡約化はどこから手をつけたらよいかが分かりにくいことが多い。

コツは、基本変形をうまく組み合わせて主成分が「1」になるようにすることである。

例題

次の行列を簡約化せよ。

$$\begin{pmatrix}0 & -3 & 3 & -2 & 1 & -7 \\0 & -3 & 3 & -2 & 1 & -7 \\0 & 3 & -3 & 2 & 0 & 9\\0 & -2 & 2 & -1 & 1 & -4 \end{pmatrix}$$

No.1:成分が全て同じ行があれば、0だけの行を作る

この操作は行同士の引き算に相当し、片方のみが残ることになる。

No.2:0だけの行があれば、一番下の方に集める

No.3:主成分が最も左にある行を用いて、主成分が1になる行を作る

ここでは、2行目の主成分「3」と、3行目の主成分「-2」を足すと「1」になることを利用している。

基本変形をうまく組み合わせて主成分が「1」になるように仕向けるとよい!

No.4:作った行の主成分「1」が階段状になるように移動する

No.5:移動した行の主成分「1」を用いて、列の他の成分を全て0にする

ここでは、一連の操作によって2列目が簡約化されている。

No.6:移動した行より下で、No.1〜No.5を繰り返す

答え

$$\begin{pmatrix}0 & 1 & -1 & 0 & 0 & 3 \\0 & 0 & 0 & 1 & 0 & 0 \\0 & 0 & 0 & 0 & 1 & 2 \\0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0\end{pmatrix}$$

まとめ

  • 行列を簡約化するには、基本変形を繰り返せばよい!
  • 簡約化では、主成分が1になる行をうまく作る!