数学

一次独立・一次従属の判定

一次独立・一次従属の定義を説明し、ベクトルの組が一次独立と一次従属のどちらかであるかを行列を用いて判定する方法を例題を解きながらわかりやすく説明します。

一次独立とは?

\(n\) 個のベクトルの組 \(\vec u_1, \cdots,\vec u_n\) が一次独立であるとは、その一次結合

$$c_1\vec u_1+\cdots +c_n\vec u_n=\vec 0$$

の関係を満たすのは、\(c_1=\cdots=c_n=0\) のように係数が全て0の場合に限る状態を指す。

(例)\(\vec u_1=\begin{pmatrix}2\\0\end{pmatrix}\)、\(\vec u_2=\begin{pmatrix}3\\1\end{pmatrix}\)

$$c_1\vec u_1+c_2\vec u_2=\vec 0$$

すなわち、

$$c_1\begin{pmatrix}2\\0\end{pmatrix}+c_2\begin{pmatrix}3\\1\end{pmatrix}=\vec 0$$

を満たすのは \(c_1=c_2=0\) に限るので、\(\vec u_1, \vec u_2\) は一次独立。

具体的に \(xy\) 平面上のベクトルとして考えてみると、\(c_1=c_2=0\) のときに限りその一次結合が零ベクトルになる。

高校と大学の一次独立の違い

高校ではベクトルの係数比較で一次独立が登場します。\(\vec u_1, \vec u_2\) が一次独立のとき、

$$c_1\vec u_1+c_2\vec u_2=c’_1\vec u_1+c’_2\vec u_2\cdot\cdot\cdot(*)$$

$$\Leftrightarrow c_1=c’_1,\,c_2=c’_2$$

としていたと思います。これは、\((*)\) 式を

$$(c_1-c’_1)\vec u_1+(c_2-c’_2)\vec u_2=\vec 0$$

と変形すれば、\(\vec u_1, \vec u_2\) が一次独立の場合のみ同値変形

$$c_1-c’_1=0,\,c_2-c’_2=0$$

$$\Leftrightarrow c_1=c’_1,\,c_2=c’_2$$

が可能となるため、係数比較の際には一次独立を確認する必要があるのです。

一次従属とは?

\(n\) 個のベクトルの組 \(\vec u_1, \cdots,\vec u_n\) が一次従属であるとは、その一次結合

$$c_1\vec u_1+\cdots +c_n\vec u_n=\vec 0$$

の関係を満たすのが、係数に0以外の値を含む場合もある状態を指す。

すなわち、一次独立でないことを一次従属という。

(例)\(\vec u_1=\begin{pmatrix}2\\1\end{pmatrix}\)、\(\vec u_2=\begin{pmatrix}4\\2\end{pmatrix}\)

$$c_1\vec u_1+c_2\vec u_2=\vec 0$$

すなわち、

$$c_1\begin{pmatrix}2\\1\end{pmatrix}+c_2\begin{pmatrix}4\\2\end{pmatrix}=\vec 0$$

を満たすのは \(c_1=c_2=0\) の他に、 \(c_1=1,c_2=-0.5\) が存在するため、 \(\vec u_1, \vec u_2\) は一次従属。

具体的に \(xy\) 平面上のベクトルとして考えてみると、\(c_1=c_2=0\) または \(c_1=1,c_2=-0.5\) のときその一次結合が零ベクトルになる。

一次独立・一次従属の判定

\(n\) 個のベクトルの組 \(\vec u_1, \cdots,\vec u_n\) が一次独立・一次従属のどちらであるかを判定するにはどうすればよいのだろうか?

実は、 \(\vec u_1, \cdots,\vec u_n\) を横に書き並べた行列 \(\begin{pmatrix}\vec u_1&\cdots&\vec u_n\end{pmatrix}\) を簡約化してその行列の階数(ランク)を求めればよい

簡約化した後、階数ベクトルの個数 \(n\) の比較により以下のように判定できる。

係数行列の階数による判定
  • \(\mathrm{rank}\:\begin{pmatrix}\vec u_1&\cdots&\vec u_n\end{pmatrix}=n\iff\)一次独立
  • \(\mathrm{rank}\:\begin{pmatrix}\vec u_1&\cdots&\vec u_n\end{pmatrix}\neq n\iff\)一次従属

\(n\) 個のベクトルの組 \(\vec u_1, \cdots,\vec u_n\) の一次独立・一次従属を判定するには、行列 \(\begin{pmatrix}\vec u_1&\cdots&\vec u_n\end{pmatrix}\) を簡約化して階数を求めればよい!

階数により判定ができる理由

\(\vec u_1, \cdots,\vec u_n\) の一次結合が

$$c_1\vec u_1+\cdots +c_n\vec u_n=\vec 0\cdot\cdot\cdot(*)$$

の関係を満たすとき、

  • \(c_1=\cdots=c_n=0\) のみを解に持つ場合は一次独立
  • \(c_1=\cdots=c_n=0\) 以外の解を持つ場合は一次従属

といえる。ではその判定を機械的に行う手法を紹介しよう。

\((*)\) 式は内積の形を用いて

$$\begin{pmatrix}\vec u_1&\cdots&\vec u_n\end{pmatrix}\begin{pmatrix}c_1\\\vdots\\c_n\end{pmatrix}=\vec 0$$

と変形できることから、係数行列が \(\begin{pmatrix}\vec u_1&\cdots&\vec u_n\end{pmatrix}\)、変数が \(c_1,\cdots,c_n\) の同次形連立一次方程式とみなすことができる!

従って、

  • 連立一次方程式がただ一つの解を持つ場合は一次独立
  • 連立一次方程式が不定解を持つ場合は一次従属

と言い換えできる。この判定には、同次形連立一次方程式と解の種類のパターンを用いれば良い。

連立一次方程式と解の種類

\(n\) 変数の連立一次方程式を \(A\vec x = \vec 0\) と表す。

  • \(\mathrm{rank}\:A=n\iff\)ただ1つの解 \(\vec x\)
  • \(\mathrm{rank}\:A<n\iff\)不定解 \(\vec x\)

すなわち、係数行列 \(\begin{pmatrix}\vec u_1&\cdots&\vec u_n\end{pmatrix}\) を簡約化して階数を求めればよいのだ!

(例1)\(\vec u_1=\begin{pmatrix}2\\0\end{pmatrix}\)、\(\vec u_2=\begin{pmatrix}3\\1\end{pmatrix}\)

$$\begin{pmatrix}\vec u_1&\vec u_2\end{pmatrix}=\begin{pmatrix} 2 & 3\\0 & 1\end{pmatrix}$$

簡約化することにより、

$$\begin{pmatrix} 2 & 3\\0 & 1\end{pmatrix}\rightarrow\begin{pmatrix} 1 & 0\\0 & 1\end{pmatrix}$$

(階数2)=(ベクトル2個)なので \(\vec u_1, \vec u_2\) は一次独立

(例2)\(\vec u_1=\begin{pmatrix}2\\1\end{pmatrix}\)、\(\vec u_2=\begin{pmatrix}4\\2\end{pmatrix}\)

$$\begin{pmatrix}\vec u_1&\vec u_2\end{pmatrix}=\begin{pmatrix} 2 & 4\\1 & 2\end{pmatrix}$$

簡約化することにより、

$$\begin{pmatrix} 2 & 4\\1 & 2\end{pmatrix}\rightarrow\begin{pmatrix} 1 & 2\\0 & 0\end{pmatrix}$$

(階数1)\(\neq\)(ベクトル2個)なので \(\vec u_1, \vec u_2\) は一次従属

行列の簡約化例題を解きながら行列の簡約化の手順をステップに分けてどこよりもわかりやすく解説します。行列の簡約化は線形代数のほとんどの問題で登場する操作であり、ポイントを知っておくことで簡単にできるようになります。...

例題1

次のベクトルは一次独立か一次従属か調べよ。

$$\vec u_1=\begin{pmatrix}2\\1\\-1\end{pmatrix},\;\vec u_2=\begin{pmatrix}-2\\-2\\3\end{pmatrix},\;\vec u_3=\begin{pmatrix}-1\\-2\\4\end{pmatrix}$$

解答

\(\vec u_1, \vec u_2,\vec u_3\) が一次独立か一次従属かを調べることは関係式

$$c_1\vec u_1+c_2\vec u_2 +c_3\vec u_3=\vec 0$$

$$\Leftrightarrow\begin{pmatrix}\vec u_1&\vec u_2 &\vec u_3\end{pmatrix}\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\c_3\end{pmatrix}=\vec 0$$

$$\Leftrightarrow\begin{pmatrix} 2 & -2 & -1\\1 & -2 & -2 \\ -1 & 3 & 4\end{pmatrix}\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\c_3\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0\\0\\0\end{pmatrix}$$

の \(c_1, c_2,c_3\) の値を調べることと同値である。

係数行列を簡約化することで、

$$\begin{pmatrix} 2 & -2 & -1\\1 & -2 & -2 \\ -1 & 3 & 4\end{pmatrix}\rightarrow\begin{pmatrix} 1 & 0 & 0\\0 & 1 & 0\\ 0 & 0 & 1\end{pmatrix}$$

となることから(階数3)=(ベクトル3個)となり、この連立一次方程式の解は

$$\begin{pmatrix} 1 & 0 & 0\\0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\c_3\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0\\0\\0\end{pmatrix}$$

$$\Leftrightarrow c_1=c_2=c_3=0$$

のただ1つである。従って、\(\vec u_1, \vec u_2,\vec u_3\) は一次独立である。

ベクトルが \(n\) 個のとき、係数行列の簡約化に \(n\) 次の単位行列 \(E\) が出現するときは、一次独立と言える!

例題2

次のベクトルは一次独立か一次従属か調べよ。

\(f_1(x)=2-2x-3x^2\)、\(f_2(x)=1-x-x^2\)、\(f_3(x)=-1+x+3x^2\)

解答

各ベクトルを標準基底 \(\{1,x,x^2\}\) を用いて列ベクトル表現に変換すると、

$$f_1=\begin{pmatrix}1& x & x^2\end{pmatrix}\begin{pmatrix}2\\-2\\-3\end{pmatrix}$$

$$f_2=\begin{pmatrix}1& x & x^2\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1\\-1\\-1\end{pmatrix}$$

$$f_3=\begin{pmatrix}1& x & x^2\end{pmatrix}\begin{pmatrix}-1\\1\\3\end{pmatrix}$$

よって、

$$\begin{pmatrix}f_1& f_2 & f_3\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1& x & x^2\end{pmatrix}\begin{pmatrix} 2 & -2 & -3\\1 & -1 & -1 \\ -1 & 1 & 3\end{pmatrix}$$

となる。従って \(f_1,f_2,f_3\) の一次関係は

$$c_1f_1+c_2f_2 +c_3f_3=0$$

$$\Leftrightarrow\begin{pmatrix}f_1& f_2 & f_3\end{pmatrix}\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\c_3\end{pmatrix}=0$$

$$\Leftrightarrow\begin{pmatrix}1& x & x^2\end{pmatrix}\begin{pmatrix} 2 & -2 & -3\\1 & -1 & -1 \\ -1 & 1 & 3\end{pmatrix}\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\c_3\end{pmatrix}=0$$

とおける。 \(1,x,x^2\) が一次独立だから、

$$\begin{pmatrix} 2 & -2 & -3\\1 & -1 & -1 \\ -1 & 1 & 3\end{pmatrix}\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\c_3\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0\\0\\0\end{pmatrix}$$

となる。係数行列を簡約化することで、

$$\begin{pmatrix} 2 & -2 & -3\\1 & -1 & -1 \\ -1 & 1 & 3\end{pmatrix}\rightarrow\begin{pmatrix} 1 & -1 & 0\\0 & 0 & 1\\ 0 & 0 & 0\end{pmatrix}$$

となることから(階数2)\(\neq\)(ベクトル3個)となり、この連立一次方程式は \(c_1=c_2=c_3=0\) 以外の解を持つ。従って、\(f_1, f_2,f_3\) は一次従属である。

ベクトルが \(n\) 個のとき、係数行列の簡約化に \(n\) 次の単位行列 \(E\) が出現しないときは、一次従属と言える!

まとめ

  • 一次独立とはベクトルが自明でない一次関係を持たないことである。
  • 一次従属とはベクトルが自明でない一次関係を持つことである。
  • ベクトルの一次独立・一次従属を判別するにはベクトルの一次結合行列の階数を調べればよい。