一階線形微分方程式

1階線形常微分方程式

1階線形微分方程式

次の形の微分方程式を考えよう。( \(p(x),q(x)\) は \(x\) だけの関数とする。)

$$y’+p(x)y=q(x)$$

この形の微分方程式は \(p(x)y\) の項が邪魔で左辺右辺それぞれに上手く「\(x\)だけの式」と「\(y\)だけの式」に整理することができない。

よって変数分離の解法とはまた別の戦法で解き進める必要がある。

例題

上式における \(p(x)=1, q(x)=\cos{x}\) の場合

つまり、次の微分方程式を解け。 $$y’+y=\cos{x}$$ 

 

例題の解答

No.1 : 左辺をムリヤリ積の微分形に変形

まず両辺に \(x\) の関数 \(\mu(x)\) をかける。

$$\mu y’+\mu y=\mu\cdot\cos{x}$$

ここで、\(\mu\) について \(\mu=\mu’\) を満たすものと設定すれば

左辺第二項目を置き換えた次の式を得る。

$$\mu y’+\mu’ y=\mu\cdot\cos{x}$$

\(\mu y’+\mu y=\mu\cdot\cos{x}\) の左辺について、\(\mu y’+\mu’ y=\left(\mu\cdot y\right)’\) を連想した。

さらに左辺について \(\left(\mu\cdot y\right)’=\mu y’+\mu’ y\) より

$$\left(\mu\cdot y\right)’=\mu\cdot\cos{x}$$

今、\(\mu\) について \(\mu=\mu’\) と設定したが、これはつまり \(\mu(x)=\mathrm{e}^x\) ということ(微分しても形が変わらない関数)だから

$$\left(\mathrm{e}^x\cdot y\right)’=\mathrm{e}^x\cdot\cos{x}\cdot\cdot\cdot\left(A\right)$$

と変形できる。

このムリヤリ設定した \(\mu\) を積分因子という。

\(\mu=\mu’\) から \(\mu=\mathrm{e}^x\) を得たが、このとき積分定数がいらないことに注意!!

\(\mu=\mathrm{e}^x+C\)  としないこと!!

No.2 : 両辺を \(x\) で積分

\(\left(A\right)\) 式の両辺を \(x\) で積分する。

$$\mathrm{e}^x\cdot y=\int\left(\mathrm{e}^x\cdot\cos{x}\right)dx\cdot\cdot\cdot\left(B\right)$$

右辺の積分について

$$\int\left(\mathrm{e}^x\cdot\cos{x}\right)dx=\displaystyle\frac{1}{2}\mathrm{e}^x\left(\sin{x}+\cos{x}\right)+C\ \ \ \left(Cは積分定数\right)$$

であるので \(\left(B\right)\) 式は

$$\mathrm{e}^x\cdot y=\displaystyle\frac{1}{2}\mathrm{e}^x\left(\sin{x}+\cos{x}\right)+C$$

両辺を \(\mathrm{e}^x\) で割ると

$$y=\displaystyle\frac{1}{2}\ \left(\sin{x}+\cos{x}\right)+C\mathrm{e}^{-x}$$

練習問題

練習問題1

$$y’-y=x$$

練習問題2

$$y’+2xy=x$$

練習問題3

$$y’+3y=\mathrm{e}^{3x}$$

練習問題4

$$xy’+2y=\cos{x}$$

練習問題5

$$\left(x^2\sin{x}-y\right)dx+xdy=0$$

ひとこと

今回の微分方程式では 積の微分形 を利用して解き進めていった。

\(\left(\mu(x)y(x)\right)’=\mu'(x)y(x)+\mu(x)y'(x)\) の関係式を適用させるために両辺に \(\mu\) をかけて \(y\) の係数が \(\mu’\) となるように設定を与える。(例題では \(y\) の係数が \(\mu\) であるので \(\mu=\mu’\) と設定する。)

質問がありましたらコメントにお願い致します。