線形代数

連立一次方程式①(掃き出し法)

例題を解きながら掃き出し法を用いて連立一次方程式を解く方法をコツとともにわかりやすく解説します。

掃き出し法とは

掃き出し法とは、連立一次方程式を解くための方法の1つである。

これは、連立一次方程式に対し「基本変形」と呼ばれる同値変形を繰り返して解に相当する成分のみを残す(余計なものを掃き出す)ことで、解を求める方法になる。

掃き出し法による変形の例

$$\begin{cases}\phantom{+{}}2x-2y-\phantom{1}z=4\\\phantom{+1}x-2y-2z=1\\-\phantom{1}x+3y+4z=1\end{cases}$$

$$\Leftrightarrow\begin{cases}x\phantom{{}+y}\phantom{{}+z}=1\\\phantom{x}\phantom{{}+{}}y\phantom{{}+z}=-2\\\phantom{x}\phantom{{}+y}\phantom{{}+{}}z=2\end{cases}$$

連立一次方程式の基本変形
  • 1つの式を何倍かする。(0倍以外)
  • 2つの式を入れ替える
  • 1つの式に他の式の何倍かを加える。(0倍以外)

解の種類

連立一次方程式は、係数行列と拡大係数行列の階数によって解の種類が3パターンに変化する。

連立一次方程式と解の種類

\(n\) 変数の連立一次方程式 \(A\vec x = \vec b\) とし、拡大係数行列を \([A| \vec b]\) で表す。

  • \(\mathrm{rank}\:A=\mathrm{rank}\:[A| \vec b]=n\iff\)ただ1つの解 \(\vec x\)
  • \(\mathrm{rank}\:A=\mathrm{rank}\:[A| \vec b]<n\iff\)不定解 \(\vec x\)
  • \(\mathrm{rank}\:A<\mathrm{rank}\:[A| \vec b]\iff\)解なし

本記事では最も基本的な「ただ1つの解」が求まる場合について解説する。

不定解の連立一次方程式(掃き出し法)例題を解きながら掃き出し法を用いて不定解(解が無限個)の連立一次方程式を解く方法をコツを交えながらわかりやすく解説します。...

解き方

本記事では、簡約化を通じて掃き出し法を行う。

掃き出し法は、拡大係数行列の簡約化をすることと一緒である。

なぜなら、簡約化は「行基本変形」と言われる、連立一次方程式の係数のみを取り出して基本変形を繰り返す操作であり、掃き出し法と同じ操作をしているからである。

簡約化の例

$$\left(\begin{array}{ccc|c}2 & -2 & -1& 4 \\1 & -2 & -2 & 1\\-1 & 3 & 4 & 1\end{array}\right)$$

$$\rightarrow\left(\begin{array}{ccc|c}1 & 0 & 0& 1 \\0 & 1 & 0 & -2\\0 & 0 & 1 & 2\end{array}\right)$$

行列の行基本変形
  • 1つの行を何倍かする。(0倍以外)
  • 2つの行を入れ替える
  • 1つの行に他の行の何倍かを加える。(0倍以外)

例題

次の連立一次方程式を解け。

$$\begin{cases}\phantom{+{}}2x-2y-\phantom{1}z=4\\\phantom{+1}x-2y-2z=1\\-\phantom{1}x+3y+4z=1\end{cases}$$

No.1:連立一次方程式を行列の方程式で表す

\(A=\begin{pmatrix}2 & -2 & -1 \\1 & -2 & -2\\-1 & 3 & 4\end{pmatrix}\)、\(\vec x =\begin{pmatrix}x\\y\\z\end{pmatrix}\)、\(\vec b=\begin{pmatrix}4\\1\\1\end{pmatrix}\) とおくと、

$$\begin{cases}\phantom{+{}}2x-2y-\phantom{1}z=4\\\phantom{+1}x-2y-2z=1\\-\phantom{1}x+3y+4z=1\end{cases}$$

$$\Leftrightarrow\begin{pmatrix}2 & -2 & -1 \\1 & -2 & -2\\-1 & 3 & 4\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x\\y\\z\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}4\\1\\1\end{pmatrix}$$

\(A\vec x = \vec b\) の形に変形する。

No.2:拡大係数行列を求める

$$[A|\vec b]=\left(\begin{array}{ccc|c}2 & -2 & -1& 4 \\1 & -2 & -2 & 1\\-1 & 3 & 4 & 1\end{array}\right)$$

No.3:拡大係数行列を簡約化する

$$\left(\begin{array}{ccc|c}2 & -2 & -1& 4 \\1 & -2 & -2 & 1\\-1 & 3 & 4 & 1\end{array}\right)$$

$$\rightarrow\left(\begin{array}{ccc|c}1 & 0 & 0& 1 \\0 & 1 & 0 & -2\\0 & 0 & 1 & 2\end{array}\right)$$

行列の簡約化例題を解きながら行列の簡約化の手順をステップに分けてどこよりもわかりやすく解説します。行列の簡約化は線形代数のほとんどの問題で登場する操作であり、ポイントを知っておくことで簡単にできるようになります。...

No.4:解の種類を確認する

簡約化の結果から、係数行列と拡大係数行列の階数がともに3であることがわかる。

また変数の個数も \(x,y,z\) の3個であるため、

$$\mathrm{rank}\:A=\mathrm{rank}\:[A| \vec b]=3$$

となり、解の種類は、ただ1つの解であることがわかる。

変数の個数と有効な方程式の個数が等しい場合は、解が1つに定まる。

また、係数行列の簡約化が単位行列 \(E\) になるときは、解が1つに定まると言える!

No.5:簡約化した拡大係数行列を連立一次方程式に戻す

$$\begin{pmatrix}1 & 0 & 0\\0 & 1 & 0\\0 & 0 & 1 \end{pmatrix}\begin{pmatrix}x\\y\\z\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1\\-2\\2\end{pmatrix}$$

$$\Leftrightarrow\begin{cases}x\phantom{{}+y}\phantom{{}+z}=1\\\phantom{x}\phantom{{}+{}}y\phantom{{}+z}=-2\\\phantom{x}\phantom{{}+y}\phantom{{}+{}}z=2\end{cases}$$

答え

$$\begin{cases}x=1\\y=-2\\z=2\end{cases}$$

検算

求めた解を元の連立一次方程式に代入して成り立つか確認する。

$$\begin{cases}2\cdot 1-2\cdot(-2)-2=4\\1-2\cdot(-2)-2\cdot 2=1\\-1+3\cdot(-2)+4\cdot2=1\end{cases}$$

まとめ

  • 連立一次方程式の拡大係数行列を簡約化することで解が求められる!
  • 変数の個数と有効な方程式の個数が等しい場合は、解が1つに定まる!