平面曲線のベクトル表示
次の \(xy\) 平面にある曲線を「式」で表現することを考えてみよう。

慣れた手法で式表現するのならば、
$$y=x^{2}\ \ \ \left(-1\leq x \leq 2\right)$$
と書けばいい話であるが、今回はこの曲線を ベクトル関数 として記述してみよう。
まず、\(x\) 成分を \(t\) と置いてみる。
$$x=t$$
すると、図より \(x\) の定義域は \(-1\leq x\leq 2\) であるので \(t\) についても
$$-1\leq t\leq 2$$
であると言える。
次に \(y\) 成分については \(y=x^{2}\) に \(x=t\) を代入することで
$$y=t^{2}$$
と書ける。
今回は平面を考えているため、 \(z\) については考えていないので、\(z=0\) としよう。
すると、曲線のベクトル関数 \(\pmb{r}\left(t\right)\) は次のように書ける。
$$\pmb{r}\left(t\right)=t\ \color{red}{\pmb{i}}+t^{2}\ \color{blue}{\pmb{j}}$$
ベクトル関数の挙動はこんな感じ

空間曲線のベクトル表示
平面における曲線のベクトル表示を説明したが、正直 今までの 「\(y=\bigcirc\bigcirc\)」でよくね? って思った人も多いはずである。
実は、この曲線をベクトル表示する恩恵は 空間における曲線 に対しては、如実に感じられる。
例として、次の らせん曲線 を式で表現してみよう。

\(z\) 軸を上から眺めると、みなさんお馴染みの \(xy\) 平面が見える。
らせん曲線を上から眺めると先程の図の右側のように 半径1の円に見えるはず である。となると、曲線ベクトルの \(x\) 成分、\(y\) 成分は
$$x=\cos{t}$$
$$y=\sin{t}$$
である。次に、\(z\) 成分を求める。
\(xy\) 平面に投影された単位円(上から見た図)において、\(t=\pi\) 、すなわち \(x=\cos{\pi}=-1\) 、\(x=\sin{\pi}=1\) のとき、\(z\) は先ほどの図より \(z=\pi\) である。

同様に、\(t=2\pi\) 、すなわち \(x=\cos{2\pi}=1\) 、\(x=\sin{2\pi}=1\) のとき、\(z\) は先ほどの図より \(z=2\pi\) である。

ベクトル表示の目的は \(z\) を \(t\) を使って表すことが目的である。今、\(t\) と \(z\) が一致することが分かったので
$$z=t$$
と表現できる。
以上より、今回のらせん曲線のベクトル表示は
$$\pmb{r}\left(t\right)=\cos{t}\ \color{red}{\pmb{i}}+\sin{t}\ \color{blue}{\pmb{j}}+t\ \color{green}{\pmb{k}}$$
スカラー表示 でらせん曲線を表すと
\begin{cases}x^{2}+y^{2}=1\\\\z=t\ \ \ \ \ (0\leq t\leq 2\pi)\end{cases}
となり、第1式は 単位円の式 、第2式は 平面(上昇)の式 を意味している。
これは、\(xy\) 平面に存在する単位円を \(z\) 軸正方向に引き伸ばすイメージである。
すなわち、らせん曲線を意味する。

接線ベクトル
曲線 \(y=x^{2}\) について、ある点 \(\left(t,t^{2}\right)\) における接線の方程式は、\(y^{\prime}=2x\) であるので
$$y-t^{2}=2t\left(x-t\right)$$
$$y=2tx-t^{2}$$
となる。
それでは、ベクトル表示された同様の曲線 \(\pmb{r}\left(t\right)=t\ \color{red}{\pmb{i}}+t^{2}\ \color{blue}{\pmb{j}}\) について、接線の方程式に対抗した 接線ベクトル を求めてみよう。
計算方法はいたってシンプルで ベクトル関数 \(\pmb{r}\left(t\right)\) を媒介変数 \(t\) で微分してあげればよい。つまり、接線ベクトルは
\begin{eqnarray}\displaystyle\frac{dr}{dt}&=& \displaystyle\frac{d}{dt}\left(t\right) \ \color{red}{\pmb{i}} +\displaystyle\frac{d}{dt}\left(t^{2}\right) \ \color{blue}{\pmb{j}}\\\\&=&1\cdot\ \color{red}{\pmb{i}} +2t\cdot\ \color{blue}{\pmb{j}}\\\\&=& \color{red}{\pmb{i}} +2t\ \color{blue}{\pmb{j}} \end{eqnarray}
と求まる。

この二次関数の接線ベクトルの挙動はこんな感じ。

例題
らせん曲線
$$\pmb{r}\left(t\right)=\left(\cos{t}\right)\color{red}{\pmb{i}}+\left(\sin{t}\right)\color{blue}{\pmb{j}}+\left(t\right)\color{green}{\pmb{k}}$$
について、大きさが1の接線ベクトルを求めよ。
例題の解答
接線ベクトルを求めるために ベクトル関数 \(\pmb{r}\) を \(t\) で微分する。
\begin{eqnarray}\displaystyle\frac{d\pmb{r}}{dt}&=&\displaystyle\frac{d}{dt}\left(\cos{t}\right)\color{red}{\pmb{i}}+\displaystyle\frac{d}{dt}\left(\sin{t}\right)\color{blue}{\pmb{j}}+\displaystyle\frac{d}{dt}\left(t\right)\color{green}{\pmb{k}}\\\\&=&\left(-\sin{t}\right)\color{red}{\pmb{i}}+\left(\cos{t}\right)\color{blue}{\pmb{j}}+\color{green}{\pmb{k}}\end{eqnarray}
\(\displaystyle\frac{d\pmb{r}}{dt}\) の大きさは
\begin{eqnarray}\left|\displaystyle\frac{d\pmb{r}}{dt}\right|&=&\sqrt{\left(-\sin{t}\right)^{2}+\left(\cos{t}\right)^{2}+\left(1\right)^{2}}\\\\&=&\sqrt{\sin^{2}{t}+\cos^{2}{t}+1}\\\\&=&\sqrt{1+1}\\\\&=&\sqrt{2}\end{eqnarray}
である。ここで、接線ベクトル \(\displaystyle\frac{d\pmb{r}}{dt}\) の大きさを1にするには、接線ベクトルをその大きさ \(\left|\displaystyle\frac{d\pmb{r}}{dt}\right|\) で割り算すればよい。
\begin{eqnarray}\displaystyle\frac{\displaystyle\frac{d\pmb{r}}{dt}}{\left|\displaystyle\frac{d\pmb{r}}{dt}\right|}&=&\displaystyle\frac{\left(-\sin{t}\right)\color{red}{\pmb{i}}+\left(\cos{t}\right)\color{blue}{\pmb{j}}+\color{green}{\pmb{k}}}{\sqrt{2}}\end{eqnarray}
この「大きさが1の」接線ベクトル を 単位接線ベクトル と呼ぶ。
まとめ
・曲線の \(x\) 成分を ある変数 \(t\) で置いて、\(y\) 成分や \(z\) 成分を \(t\) を使って表現する。
・接線ベクトル は曲線の ベクトル関数 を 媒介変数 \(t\) で微分してあげることで求まる。